擬家大連檄

出典: Uyopedia

擬家大連檄とは、荻生徂徠が、遠祖にあたる物部守屋になりかわって書いた、姦賊厩戸皇子蘇我馬子討伐の檄文である。

目次

本文

  擬家大連檄
月日、大連物部守屋檄中外。維天皇俄爾殂落。辠人未獲、皇嗣未立。人心洶洶焉、莫知所底止。百爾有司・大夫・國造・縣主・千夫長・百夫長、敬聽我言。我曩祖美摩治(味島治命)乃在皇磐余(神武帝)之世而有大勲勞于皇室、爲開國元臣。越子孫世世毗翼乎朝廷、以統率中外。則曁乎守屋之躬眇焉、以承先世之餘烈、忝位大連。夫諒闇三年、百官總己以聽冢宰。況此弗靖、而辠在大臣也。爾輩乃不守屋是聽、其誰與從。維皇子惟孔穗(穴穗部皇子)賢最長、敘當嗣。故守屋敬奉而立焉。則神明之宗、大行天皇之嗣也。爾輩其共奉之。弑大行天皇者駒(東漢直駒)、大臣馬子實使焉。則臣子不共戴天之讎也。爾輩其共討之。皇子豐聰以其獧巧小慧、蚤竊輿誦而覬覦於天位。挾以左道、譸張爲幻、以扇乎齊民、寔繁有徒。馬子乃推其母大后、將以奉之也、則縱賊弗討、誘以因果。是其心必謂其次者我也。端本探始、幾乎爲主。爾輩盍共討之。夫弑君者、殺無赦。與其謀者、辠釣。以左道惑於民者、殺無赦。婦人不得踐天位。寶訓之言、藏在玉府。我物部氏之世守也。惟守屋及二三大臣曁天皇、得發焉。爾輩或弗知、弗知者無辠。馬子・豐聰乃與有聞。知而故犯、辠莫大焉。昔者熊襲(弑仲哀帝者)・眉輪(弑安康帝者)誅不旋踵。而息長氏(神功皇后)之威服三韓、猶且奉其腹(胎内天皇)以號令乎海内。三韓之貢、惟不及佛像書與其人者、自皇焦鷯(仁徳帝)數百年矣。刑典所遏、豈不掲焉乎著明哉。爾輩盍思諸。且我大磤(磤馭慮。華言倭奴國。此言丈夫島)、建號曰丈夫之邦。赫赫皇祖、左璽右劍、以照臨於天下。其德蓋象諸日。日者太陽也。劍者丈夫之服也。而豐聰俾史太作書、而謂皇祖女子也。以誣我皇祖、以雌我大磤。姦之所自、蓋非一朝一夕之故也。今而弗遏、其禍必將絶我神明之祀。烏虖磯城而降、民離其樸以趨乎僞也。爾輩乃惑左道而黨豐聰。或謂豐聰聖矣。聖而干國大紀、乃君之讎是協、焉用其聖哉。爾輩猶乃有迷大順、蠢乎弗悛、皇祖其殛爾、我其孥僇爾。爾輩其能洗乃心、革乃慮、幡然自奮、後其鏃、倒其戈、以斬馬子、以馘豐聰、以慰大行天皇在上之神、則皇祖其賚爾以福祿。皇子孔穗爾君也。我其告爾功、胙爾以茅土之封。爾輩其思之哉。此檄。

※原本は『徂徠集巻之十八雑文八首』。句読点は、原本の圏点を参考にしつつ、編集者の判断で附した。()内は割り注。

訓読

  家の大連の檄を擬す
月日、大連物部守屋中外に檄す。維れ天皇俄爾として殂落す。罪人未だ獲ず、皇嗣未だ立たず。人心洶洶として、底止する所を知ること莫し。百爾有司・大夫・國造・縣主・千夫長・百夫長、敬みて我言を聴け。我が曩祖美摩治(味島治命)は、乃ち皇磐余(神武帝)の世に在りて、皇室に大勲労有り、開國の元臣たり。越[とほ]く子孫世世朝廷を毘翼し、以て中外を統率す。則ち守屋の躬眇なるに曁[およ]び、以て先世の余烈を承け、忝くも大連に位す。夫れ諒闇三年は、百官己を総べて以て冢宰に聴く。況んや此れ靖からずんば、而ち罪は大臣に在り。爾輩、乃ち守屋に是れ聴かずんば、其れ誰と与に従はん。維れ皇子は惟だ孔穂(穴穂部皇子)賢にして最長、叙として当に嗣ぐべし。故に守屋敬み奉じて焉[これ]を立つ。則ち神明の宗、大行天皇の嗣なり。爾輩其れ共に之を奉ぜん。大行天皇を弑する者は駒(東漢直駒)なり。大臣馬子実に焉を使う。則ち臣子共に天を戴かざるの讐なり。爾輩其れ共に之を討たん。皇子豊聡は其の獧巧小慧を以て、蚤に輿誦を窃みて天位を覬覦す。挟むに左道を以てし、譸張して幻を為し、以て斉民を扇り、寔[まこと]に繁として徒有り。馬子は乃ち其の母大后を推し、将に以て之を奉ぜんとするや、則ち賊を縦[はな]ちて討たず、誘ふに因果を以てす。是れ其の心に必ず其の次なる者は我なりと謂[おも]ふらん。端本探始、主と為るに幾[ちか]し。爾輩盍ぞ共に之を討たざる。夫れ君を弑する者は、殺して赦無し。其の謀に与る者は、罪釣[ひと]し。左道を以て民を惑す者は、殺して赦無し。婦人は天位を踐むことを得ず。宝訓の言は、蔵して玉府に在り。我が物部氏の世守なり。惟だ守屋及び二三の大臣曁び天皇、発することを得。爾輩或いは知らざらん、知らざる者は罪無し。馬子・豊聡は乃ち与に聞くこと有り。知りて故[ことさら]に犯すは、罪焉より大なるは莫し。昔者熊襲(仲哀帝を弑する者)・眉輪(安康帝を弑する者)誅するに踵を旋さず。而して息長氏(神功皇后)の威三韓を服し、猶且其の腹(胎内天皇)を奉じて、以て海内に号令す。三韓の貢、惟だ仏像書と其の人とに及ばざる者、皇焦鷯(仁徳帝)より数百年なり。刑典の遏むる所、豈焉を著明に掲げざるや。爾輩盍ぞ諸を思はざる。且我が大磤(磤馭慮。倭奴國を華言す。此丈夫島を言ふ)、建号して丈夫の邦と曰ふ。赫赫たる皇祖、璽を左にし剣を右にし、以て天下に照臨せり。其の德は蓋し諸を日に象る。日とは太陽なり。剣とは丈夫の服なり。而して豊聡の俾史太だ書を作りて、皇祖を女子なりと謂ふ。以て我が皇祖を誣ひ、以て我が大磤を雌とす。姦の自る所、蓋し一朝一夕に非ざるの故なり。今にして遏めずんば、其の禍は必ず将に我が神明の祀を絶たんとす。烏虖[ああ]磯城而ち降り、民其の樸を離れ、以て偽に趨く。爾輩乃ち左道に惑ひて豊聡に党す。或いは豊聡は聖なりと謂ふ。聖にして國の大紀を干し、乃ち君の讐に是れ協す。焉んぞ其の聖を用ひんや。爾輩猶乃ち大順に迷ふこと有り、蠢乎として悛めずんば、皇祖は其れ爾を殛[ころ]し、我は其れ爾を孥僇せん。爾輩其れ能く乃[なんぢ]が心を洗ひ、乃が慮を革め、幡然として自ら奮ひ、其の鏃[やじり]を後にし、其の戈を倒[さかしま]にし、以て馬子を斬り、以て豊聡を馘[みみき]り、以て大行天皇上に在るの神を慰むれば、則ち皇祖は其れ爾に賚ふに福禄を以てせん。皇子孔穂は爾が君なり。我其れ爾が功を告げ、爾に胙[むく]ゆるに茅土の封を以てせん。爾輩其れ之を思へや。此檄なり。

※一部意味が不明確な部分があるが、いちおう上記の通り訓読した。

語釈

  • 擬:文章を書くこと。
  • 月日:某月某日の意。
  • 中外:都の内外。つまり「中央と地方」のことで、現代語に言い換えれば「全国」にあたる。
  • 殂落:天子が亡くなること。崩御。
  • 洶洶:波風が騒がしい様。転じてここでは、世の中が騒がしい様。
  • 底:止まる。「底止」で熟している。
  • 百爾:すべての。
  • 曩祖:祖先。
  • 毗(=毘)翼:助ける。
  • 眇:はるかに遠い様。
  • 百官総己以聴冢宰:すべての官吏は、身を引き締めて、宰相の命に従うことをいう。論語憲問篇第四十二章に出典がある。
  • 敘(=叙):順序。
  • 宗:一族。
  • 獧巧小慧:悪賢く、小賢しいこと。
  • 輿誦:輿論のこと。世論。
  • 覬覦:身分に不相応なことを望むこと。
  • 左道:邪道に同じ。
  • 譸張為幻:欺き惑わすこと。
  • 斉民:庶民。
  • 因果:仏教の思想用語だが、ここでは仏教そのものを指している。
  • 端本探始:語義未詳。或いは、隅々まで目を通して根本を探るという意か。

解説



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